今回は旧南満州鉄道に乗ることをテーマに、大連と旅順間の移動方法に関してレポートします。以前より戦前に大連で生まれ育った日本人が、自らの故郷を訪れる目的で大連を旅行する事はよくあったそうです。しかし旅順が近年外国人に開放されると(戦後長い間旅順は軍港というその特性から外国人は立入禁止区域でした)、旅順が目的で大連をその足掛かりにする人が出てきました。さらにその動きに拍車をかけたのが司馬遼太郎作『坂の上の雲』のNHKスペシャル大河ドラマ化でしょう。このドラマは近代世界史・日本史における日露戦争というものがどのような意味を持っていたのかという重厚なテーマを改めて我々に投げかけました。この作品の一ファンとして、今後大連から旅順を訪れる日本人の旅の一助になればと考え二都市間の交通についてここに記録します。
長期間の滞在が可能な方なら、大連から鉄道を伝って奉天、長春や哈爾濱などを旅しながらかつての満州国に思いをはせるという手もあります。が数日間しか猶予が無い方ならそれは難しいでしょう。しかし何とかして旧満鉄の路線に乗りその雰囲気を味わいたいとすれば、それは大連旅順間の鉄道移動ということになるでしょう。幸いにも現在大連鉄道が通る路線は旧満鉄路線をほぼ完全な形で受け継いでいます。
さてここで問題になるのが大連旅順間の鉄道の本数です。なんと一日一往復しかありません。行きは朝07:10大連駅発09:12旅順駅着、帰りは17:13旅順駅発19:04大連駅着です。往復とも鉄道に乗る場合は現地滞在時間が8時間です。もし現地でタクシーをチャーターして効率的に回るのであれば、目ぼしい観光地は大方潰せると思います(旅順市内は広く坂も多いので徒歩だけで歩き回ることは不可能です)。ただ、現実問題として朝07:10の電車に乗るのは難しい方が多いと思います。それに大連駅はそれなりに大きいですから、慣れない異国での切符の購入やホームへのアクセスに迷ったり間違った汽車に乗るリスクもあります。それよりは大連から旅順へは15~20分おきに出ているバスに乗り(分かりやすいです)、旅順から大連への復路を鉄道に乗る選択肢の方が負担が少ないです(旅順駅は小さいですので切符の購入も乗る汽車を間違える心配もありません)。今回は管理人が実際に往路バス、復路鉄道のルートを辿りましたので写真付きでご紹介いたします。
大連市のターミナル駅大連駅は上野駅を模して1937年完成
大連駅の高架下トンネルをくぐり駅舎の裏に出ると(大連駅舎に入る人の流れとは別の流れについていけば直ぐにわかります)、大きな広場にでます。この大きな広場の北の端辺がバスの発着場所になっています。バスが何台も連なって止まっているのですぐにわかると思います。バスの付近にチケットを買うブース(・・というより小屋)がありますのでそこでチケットを購入します。
これが大連駅から旅順バスターミナル駅まで運航している
「旅南客伝」のバス。満席になり次第15分おき位に出る。
バスの列の先頭付近にチケット売り場(小屋)があるので
そこでチケットを購入して列に並ぶ。中国人は列に並ぶ
文化など無いのかと勝手に思ってました・・・スイマセン
バスのチケットは7元なので約100円
係員にチケットを渡されるときポイッと投げられるので注意!
日本じゃ絶対に有り得ない・・苦情ものである・・・
バスは満員になり次第出発します。大体15分おき位です。完全自由席です。中はお世辞にも綺麗とは言えません。座席と壁の間にごみが詰まっていたりします。快適なバスの旅のために気を付けてほしいのが席の位置です。一番前と一番後ろしか窓が開きませんのでそこに座った方がいいです。中にはエアコンがない(使わないのか?)ため窓が無い席は夏うだるような暑さになります。途中一番前の席の窓と一番後ろの席の窓を全開にして、バス内の空気を循環させているときはマシだったのですが、途中一番前の座席の客が寒く感じたのか窓を完全に閉めてしまったためその後約一時間バスの真ん中の席あたりはサウナのようでした。私が実際にバスに乗った6月であの暑さでしたので、最も暑い7月8月だとどんな状態になるか・・・想像したくもありません。
目的地の旅順バスターミナル駅
大連から約一時間で目的地の旅順バスターミナル駅に到着します。到着スペースにまるで北朝鮮の兵士のような目をギラギラさせた軍人がいます。あまり目立つ行動をして拘束されたりなどしたら大変面倒になるので、現地人に溶け込むように人の流れについて行きました。このターミナル駅は坂の中腹に立っているのですが、そのまま目の前の大通りを坂を下るように(南に向かって)歩いていくと旅順の中心街「中心広場」に出ることが出来ます。
坂を下りきったところに見えてくる旅順市の「中心広場」
この建物を突っ切って裏手に古い商店街がある
広場を右に見渡すと山頂に表忠塔(元白玉山塔)が見える
一番右側のショッピングモールは日本統治時代
旅順市役所が立っていた場所だ
広場で乗り物に乗る家族連れ
嘗て数多の砲弾が撃ち込まれた場所とは信じられない
この広場まで来ると待機しているタクシーが大量にいますので、筆談で目当ての場所に連れて行って貰うといいでしょう。なお上の写真でも述べたとおり、これらの商業施設の裏手には古い商店街が現存します。その商店街をさらに南下して直進すると軍の港湾施設に入ってしまいます。その付近ではあまり露骨に写真撮影をしない方が無難なので注意して下さい。(警察車両も結構頻繁に行き来してます。)
裏手の古い商店街(海側を背にして北向きに撮影)
商店街外れに放置された使われなくなった古い電動遊戯
この後、私は徒歩で市内を歩きましたが、徒歩での移動はお勧めしません。というのは、見るべきところが広い地域に点在しているのと、旅順は史跡が山の上にあることが多いのでその上り下りは容易ではないからです(当たり前ですが、だからこそ旅順要塞足り得た訳です)。私は今回旅順は二度目で前回ツアーに参加して既に殆どの史跡は見ていることと、自分の足で歩いて旅順の街の雰囲気を感じてみたかったため徒歩での移動を選びました。記事の都合上途中訪れた場所は割愛し旅順駅から大連への鉄道に関して記します。
旅順駅入り口付近のユニークな形の植木が目印になる
旅順駅前交差点は中国海軍港湾施設の門前
中国人観光客が港湾を撮影しようとして注意されていた
旅順駅駅舎は完成当時そのままの姿を残している
駅は中国語で「站」
タクシー運転手に筆談で目的地を示す場合は注意したい
大連鉄道の社章は旧満鉄の社章を受け継いだデザインに
満鉄の社章 線路とMの字
駅舎入り口
高名な駅だが中はこじんまりとしている
旅順-大連の時刻表は一日一往復しか汽車が無いことを示す
券売所は友人方式。中国語は話せないので携帯電話に
「大連站行」と打ち駅員に見せるとすんなり理解してくれた
旅順発大連行の切符は8.5元(130円)
二次元バーコードは結局使わなかったが何用かは不明
駅舎の向かいには警察署が・・・
昼間から賭博をする警察官達
いよいよ出発 切符にハサミを入れられたらホームへ
駅舎から列車までは少し歩く
ホームを巡回する旅順駅員
駅舎は古いが社内は現代的
勿論エアコンも完備で快適
続々と客が乗ってくる
切符は改札口でハサミを入れられる
まだ日本でも自動改札機がなかった時代を思い出させる
ほぼ定時に出発 途中駅の到着時刻は予想以上に正確
旅順要塞の一角であったと思われる山
今では当時の面影は全くない
旅順に向かう児玉源太郎が、要領を得ない
戦況報告をする下士官を叱りつけた長嶺子駅
長嶺子駅員とホーム
列車は大連周水子空港の滑走路末端を通過する
夕暮れの中離陸する飛行機と進入角指示灯
大連駅周辺は戦前の建物が多く現存する
旅順駅とは違い近代的な大連駅プラットフォーム
大連駅到着も予定時刻通り 予想以上の正確さ
夕暮れ時の大連駅
講評 旅順駅付近は見るものが全くなく、かといって喫茶店なども全くないので時間を潰す方法がありません。しかも旅順駅自体が中国海軍の港湾施設入り口に位置するため、付近の露骨な写真撮影はリスクを伴います(実際に中国人観光客が写真撮影を注意されていました)。そのためあまり早い時間に旅順駅に行くと時間を持て余すことになるでしょう。(因みに、記事の構成上割愛していますが、管理人も切符を購入してから二時間ほど時間を潰すために旧高崎町=現・八一路の方まで散策しました。遠かった・・・)
又、タクシー運転手に旅順駅に連れて行ってもらう際、私は筆談で「旅順站」と書いたのですが、間違えて最初のバスターミナルに連れて行かれそうになりました。確かにバスターミナルも旅順「バス」駅なのかもしれません。必ず鉄道駅であることを伝えた方が無駄な移動時間を取らないと思います。
【ご報告】皆様の1クリックが記事更新頻度を早めます!!
当サイトは広告収入のみにより運営しています。売上金は主に取材のための航空券代として使わせて頂いております。ランキングサイトで上位になればなるほど早く航空券代が貯まりますので新記事の追加を早めることが出来ます。どうぞ皆様の1クリックをお願い致しますm(_ _)m
Leave a Reply